中小企業が第三者へのM&Aを進めるにあたって、FAや仲介会社への報酬を補助してくれる制度──それが「事業承継・M&A補助金」です。買い手・売り手どちらの立場でも活用できるこの制度は、補助率最大2/3、補助上限額950万円という手厚い内容になっています。
この記事では、2025年4月に開始された「第11次公募」の最新要件を中心に、申請時の注意点や、行政書士がどう支援できるかをご紹介します。
事業承継・M&A補助金とは
中小企業が、廃業や引退を前提に第三者に事業を承継・売却する際にかかる費用──たとえば仲介会社への成功報酬やデューデリジェンス(DD)費用など──を補助してくれる国の制度です。
令和7年(2025年)4月より、第11次公募が開始されました。
買い手・売り手どちらも対象
本補助金は、「買い手支援類型」「売り手支援類型」の2つに分かれており、どちらからでも申請可能です。
- 買い手支援類型(Ⅰ型):第三者割当増資・株式交換・吸収合併などで、事業を譲り受ける側が対象。
- 売り手支援類型(Ⅱ型):株式譲渡・事業譲渡を行う中小企業者や個人事業主が対象。
【11次公募】専門家活用枠のみ募集
11次公募では、これまで存在していた「PMI枠」や「設備投資補助枠」などは一切なく、「専門家活用枠」に限定された募集となっています。
区分 | 第10次まで | 第11次(最新) |
公募枠 | ①事業承継促進枠 ②専門家活用枠 ③PMI推進枠 ④廃業・再チャレンジ枠 | 専門家活用枠のみ(買い手支援類型・売り手支援類型) |
補助対象経費 | 設備投資・販路開拓費も可 | FA費用・仲介費用・DD費用・表明保証保険料など専門家報酬に限定 |
契約時期 | 交付決定前契約も一定条件で対象 | 交付決定後に契約・発注・支払いを行ったもののみ対象 |
相見積 | 条件④(専任FA契約等)で免除可 | 原則2社以上必須。免除は①全社から辞退②レーマン表以下③マッチングサイト定額のみ |
補助率・上限額
分類 | 補助率 | 上限額(基本) | DD費用の加算 | 廃業費の加算 |
買い手支援類型(Ⅰ型) | 2/3以内 | 600万円 | +200万円 | +150万円 |
売り手支援類型(Ⅱ型) | 1/2 または 2/3以内(※) | 600万円 | +200万円 | +150万円 |
(※)売り手支援類型で補助率を2/3にできる条件
・物価高騰の影響で営業利益率が直近決算期と比べ低下している
・直近決算が営業損失または経常損失(赤字)
いずれかを満たす場合、補助率 1/2 → 2/3 にアップします。
補助対象経費
経費区分 | 具体例 | 留意点 |
FA・仲介手数料 | 着手金・中間報酬・成功報酬 | 登録済みM&A支援機関のみ対象 |
デューデリジェンス費用 | 法務・財務・税務・IT DD 等 | 実施すれば 200万円上乗せ可 |
表明保証保険料 | W&I保険(売り手手配) | 買い手と重複加入不可 |
廃業関連費 | 原状回復・在庫廃棄など | 加算上限 150万円。引継ぎ未実現だと対象外 |
申請~交付までの流れ(11次公募)
- 専門家候補を2社以上選定・NDA締結
- 相見積取得(例外3ケースの該当可否を確認)
- jGrantsで公募申請(2025/5/9~6/6 17:00 締切)
- 交付決定通知 受領
- FA・仲介と正式契約 → 基本合意 → DD → 最終契約
- 実績報告・交付請求(補助金入金)
第11次公募での注意点とは?
前述のとおり、2025年4月に公表された第11次公募では、これまでと大きく異なる制度変更がいくつかあります。M&Aを行う中小企業にとって、この11次公募を利用するにあたっての注意点をM&Aの実務と照らし合わせながらまとめておきます。
専門家活用枠しか使えない
11次公募では、「PMI支援枠」「設備投資枠」などが廃止され、専門家活用枠のみが公募対象となっています。
このため補助対象は、基本的に以下のようなFA・仲介にかかる費用に限定されます。
- 着手金、中間報酬、成功報酬
- デューデリジェンス(DD)費用
- 表明保証保険料(W&I保険)
逆に言えば、設備投資や販路開拓、広報などM&A後の成長に向けた支援費用は一切補助されません。
「交付決定前」の契約はNG
これまでは、FA契約や仲介契約を先に締結していてもOKという運用が一部認められていました(10次までは「成功報酬のみ対象」などの条件つきで補助可能)。
しかし11次ではこの例外がなくなり、交付決定後に結んだ契約・発注・支払いのみが補助対象となります。
つまり、「すでにFAや仲介と契約している案件」は11次公募の対象外になりやすいのです。
相見積もり原則がさらに厳格化
第11次公募では、すべてのFA・仲介報酬について相見積もり取得が原則必須となりました。
具体的には、
- 成功報酬でも中間報酬でも、2社以上の見積書が必要
- 専任契約だからといって免除されることは基本的にない
- 見積不要の例外(レーマン表・断られた場合など)はごくわずか
という非常に厳しい条件となっており、M&A実務に即さない制度設計であると批判の声も出ています。
相見積もりが実務にそぐわない理由
M&Aでは、以下のような理由で「複数見積もり」が現実的ではない場面が多くあります。
項目 | 内容 |
機密性 | 複数の業者に案件情報を出すと情報漏洩リスクがある |
専任契約 | 専任契約が原則で、他業者に見積を求めると違約になる |
案件規模 | 中小企業のM&Aは件数が少なく、他社が見積を出してくれないことも多い |
それでも「見積がなければ補助対象にしない」という方針が貫かれており、申請可能な案件自体が限定的になるおそれがあります。
相見積もりが不要になる条件
補助金事務局が定めた「例外的に相見積もり不要と認められるケース」は、次の3つだけです。
従来は、たとえば「専任契約を結んでいる」「M&A支援機関登録制度に基づく適正価格である」といった理由により相見積もりが免除されることが多くありました。しかし、11次では以下のような例外が大幅に縮小されています。
条件 | 内容 |
条件① | 複数の専門家に依頼したが、すべて断られた |
条件② | 譲渡価格・資産規模に応じてレーマン表で算出した金額以下 |
条件③ | M&Aマッチングサイト経由での定額手数料のみ(成約時) |
これらに該当しない場合は、たとえ一社専任で進めたい場合でも、見積書を2社分取得しなければなりません。
専門家選定理由書は「代替不可」
「関与専門家選定理由書を出せば、相見積の代わりになるのでは?」と考える方もいますが、それは間違いです。
公式には、「理由書は提出しても、相見積の代替とはなりません」と明記されています。
FAや仲介と組んで申請するには?
FA報酬や仲介手数料を補助対象にしたい場合は、次のような条件を満たす必要があります。
- M&A支援機関登録済のFA・仲介業者であること
(登録されていないと補助対象外) - 交付決定後に契約・発注・支払いすること
- 契約書に「中間報酬」や「成功報酬」についての記載が明記されていること
- 基本合意書・最終契約書を補助期間内に締結していること
行政書士による支援内容
当事務所では、以下のような形で「M&A補助金」申請をご支援します。
- M&Aスキームに応じた補助対象性の判断
- M&A支援機関登録の有無チェック
- 申請書作成、必要添付書類の整理・提出代行
- 実績報告・交付請求までの一貫支援
M&Aの最初のご相談から補助金活用まで、トータルで支援できる数少ない行政書士事務所です。
まとめ
第11次公募では、制度としてのハードルが高くなっており、M&Aを始める前の段階から制度を意識して準備することが重要です。
「仲介手数料に補助金が使えるか?」
「FAとの契約が補助対象になるか?」
「相見積もりが不要なケースか?」
こうした疑問がある場合は、どうぞお気軽にご相談ください。
初回相談は無料です。
加えて当事務では、高品質なサービスを提供すべく 提携先の行政書士とともに、単独受任時と変わらない報酬での共同受任にも応じています。
提携先事務所:crenlylaw.com
代表挨拶

行政書士藤原七海事務所の藤原です。
当事務所では補助金申請のサポートに力をいれております。
補助金申請のお手続きに何かお困りごとがある方はお気軽にご相談ください。
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