【2025年版】観光DX補助金(専門人材伴走支援型)とは?申請要件・対象経費・手続きを行政書士が解説

補助金

観光DX補助金(正式名称:令和7年度「全国の観光地・観光産業における観光DX推進事業」)は、観光庁が実施する補助金制度です。インバウンドをはじめ急速に回復する観光需要を踏まえ、「稼げる地域・稼げる産業」を全国に創出し各地域に観光の恩恵を行きわたらせることを目的としています。そのためデジタル技術の活用を促進する様々な取組を支援しており、2025年度(令和7年度)は複数の類型で公募されています。

「専門人材による伴走支援型」もその一つで、デジタル導入後の活用まで含め専門人材が伴走支援する取組に対する補助金です。本記事では、地方公共団体やDMO、観光協会、観光事業者など申請をご検討中の皆様に向けて、この専門人材伴走支援型の制度概要や申請要件、スケジュール、注意点などを解説します。

補助金の目的と全体像

観光DX補助金【専門人材による伴走支援型】は、観光分野におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)を専門人材の力で推進することを目的としています。観光地域や事業者が、自らの地域課題に即したDX計画を策定し、適切なデジタルツールを導入・活用できるよう、外部の専門人材を招いて伴走支援を受ける際の人件費を補助する制度です。この補助により、地域一体となった持続可能な観光地域づくりの実現が期待されています。

2025年度の観光DX推進事業では、「観光地の販路拡大・マーケティング強化型」「観光産業の収益・生産性向上型」など複数の支援類型がありますが、本稿で扱う専門人材による伴走支援型はそれらとは異なるアプローチです。他の類型がシステム導入費用そのものを補助するのに対し、本類型では専門人材の派遣費用に焦点を当てている点が特徴です。すなわち、DX推進のプロフェッショナルの知見を地域や事業者が得ながらプロジェクトを進められるよう、人的支援に係るコストを国が負担します。

補助対象者・補助対象事業・要件

補助対象者(申請できる主体)は、この事業で補助事業を実施できる団体・事業者です。具体的には、地方公共団体(都道府県・市町村)、観光地域づくり法人(DMO)、観光協会等、および観光事業者(旅館・ホテル、旅行業者、観光施設運営者など)とされています。地域の観光振興に関わる幅広い主体が対象となりうるため、単独の企業だけでなく地域内の複数事業者が連携するケースでも申請可能です(後述の加点要素にもなります)。

補助対象事業(支援の対象となる事業内容)は、補助対象者が実施する以下のようなDX推進の取組です:

  • 観光DXに関する計画の策定 – デジタル技術を活用した地域課題解決や事業成長の計画づくり
  • 旅行者の利便性向上や観光産業の生産性向上につながるデジタルツールの導入 – 例:多言語対応の観光情報サイト、デジタルマップ、宿泊予約・レベマネ(PMS・Revenue Management)システム等の導入
  • 上記デジタルツール導入後の活用 – 例:導入したシステムを活用した顧客データ分析やマーケティング施策の展開等

これら観光DX推進の各フェーズ(計画策定・導入・活用)に対し、専門人材の派遣による伴走支援を受ける取組であることが補助の条件です。

主な要件として、申請団体は上記取組内容に適した専門人材を自ら選定する必要があります。観光DXの領域(例えば「旅行者の利便性向上・周遊促進」「観光産業の収益・生産性向上」「観光地経営の高度化」など)に精通し、適切なノウハウ・スキルを有する人材であることが求められます。また、申請者および選定した専門人材が反社会的勢力と一切関係がないことが条件となっています。さらに、専門人材が申請団体に常勤の職員として既に勤務している場合(いわゆる自社社員を専門家として計上するケース)は補助対象外と明記されています。要するに、外部から新たに招聘する専門家でなければなりません。

補助金額・補助対象経費・対象外経費

補助金額(補助率・上限額): 本事業の補助金は定額補助で、上限額は800万円までとなっています。通常の補助金のような自己負担割合の規定(補助率)はなく、条件を満たす経費について上限額の範囲内で全額が支給されます(下限額の設定もありません)。例えば専門人材を2名以上派遣する場合でも、補助金の総額は合計800万円までとなります。※800万円を超える部分が発生する場合は申請者の自己負担となります。

補助対象経費: 補助の対象となるのは専門人材の派遣に伴う人件費です。具体的には、前述の観光DX計画策定・デジタル導入・活用支援といった目的で派遣される専門人材の給与・謝金等(報酬)および派遣に必要な経費が該当します。専門人材の活動に直接要する作業時間分の人件費のほか、活動に必要な交通費宿泊費も含めて補助対象に計上できます(算定方法は後述)。つまり、この補助金で認められる経費はDX伴走支援を行う人材に支払うコストに限定されており、システム導入費用そのものや物品購入費等は含まれません。

補助対象外経費: 上記以外の経費は補助の対象外です。主な対象外項目は次のとおりです。

  • 本事業の目的に沿わない業務にかかる費用(専門人材にDX以外の業務を依頼した場合の費用など)
  • 専門人材の派遣費用「以外」の経費(機器購入費、ソフトウェア利用料、広報費など人件費以外のもの全般)
  • 国の定める支出基準上限を超える人件費単価(ガイドラインで規定された上限額を超える高額な報酬単価部分)
  • 事業期間外に発生した経費(交付決定前に契約・作業した分や、完了報告提出後の支出は補助されません)
  • 補助事業の資金調達に伴う利子振込手数料・収入印紙代
  • 他の補助金等と重複している経費(同一内容で国の他施策から資金を得ている場合)

以上のように、本補助金は人件費専用の補助であり、ハードやソフトの購入費用、通信費・光熱費等の間接経費、そして補助対象期間外の支出などは一切認められない点に注意が必要です。

申請スケジュール・提出書類・申請方法

申請のスケジュールは以下のとおりです(2025年度実績)。

  1. 参加申込(事前エントリー)期間: 2025年5月15日(木)13:00 ~ 6月3日(火)17:00
    上記期間内に特設ウェブサイトでアカウント登録(参加申込)を行います。5月15日13時より前に計画申請を行う場合は事前登録不要でしたが、通常は事前登録を経てから計画申請を行います。
  2. 計画申請(事業計画書提出)期間: 2025年4月16日(水)~ 6月6日(金)17:00
    ウェブ上の申請フォームに必要事項を入力し、事業計画書や関連書類を提出します。4月16日~5月15日13:00までは暫定的にメール提出も認められていましたが、5月15日以降は基本的にオンラインシステムでの申請となります。締切時間厳守。余裕を持った申請が推奨されています。

上記の通り、事前に参加申込(アカウント取得)を行った上で、本申請となる「計画申請」を行う二段階の手続きになっています。申請受付は観光DX補助金事務局の特設ウェブサイト上で行われます。参加申込をすると事務局からログイン情報等の案内メールが届き、その後マイページ上の申請フォームにアクセスできるようになります。フォームに沿って事業計画の内容を入力し、必要書類をアップロードして提出する流れです。

主な提出書類: 計画申請時には、事業内容や経費の詳細、申請者・専門人材の情報を示す各種書類を提出します。主なものは次の通りです。

  • 事業計画書(計画申請フォーム) – 補助事業の目的や内容、実施体制、KPI、スケジュール等を記載するフォーム(様式1-1~1-3に相当)
  • 補助事業経費内訳書 – 専門人材の人件費内訳や算定根拠を示す書類(様式1-4)。見積書等のエビデンスも添付します(※人件費単価算定の裏付けや、他社比較のため可能な限り2社以上から見積取得が望ましい)
  • 専門人材の同意書 – 派遣予定の専門人材本人に署名させる同意書(様式2)。申請内容に沿って派遣協力すること、および反社会勢力でないこと等を宣誓するもの
  • 団体の証明書類 – 申請主体の登記簿謄本や法人概要が分かる書類、直近の財務諸表など(※地方公共団体は不要ですが、DMOや観光協会、民間事業者が申請する場合に提出を求められます)
  • その他参考資料 – 専門人材の経歴書や、導入予定のデジタルツールのカタログ・仕様書、地域の連携体制が分かる組織図など、任意提出資料(任意ではありますが、審査で有利になる情報は積極的に提出すると良いでしょう)

提出書類に不備があると受理されなかったり審査対象外となる可能性があります。書類は事前に入念にチェックし、正確な情報を記載しましょう。提出後は事務局から自動返信メールが届くので必ず確認してください。

なお、申請締切後、観光庁および事務局による審査・採択結果の通知が行われます(締切から1〜2ヶ月程度が目安)。採択通知を受けた場合でも、その時点ではまだ交付決定(正式な補助金交付の承認)ではないことに注意が必要です。引き続き交付申請等の手続きを経て交付決定を受けてから事業着手となります(詳細は後述)。

審査の観点・加点要素

提出された事業計画は、観光庁と事務局により書類審査され、採択・不採択が決定されます。審査の主な観点は以下のような点です。

  • 事業目的・内容の適合性: 提案内容が本補助事業の目的に沿っているか、組織の課題解決に適した専門人材が選定されているか
  • 事業計画の確実性: 実施期間に無理がないか、申請者以外に支援先(複数の関係事業者等)がいる場合は円滑に進められる体制が検討されているか
  • 事業内容の効果測定と継続性: 取り組みの成果を測るKPI(指標)が設定されているか、また補助事業を通じて申請者や関係者がノウハウを習得し事業終了後も自走できる見込みがあるか
  • 経費の妥当性: 計画された活動内容に対して人件費の積算根拠が適切か(時間単価×予定時間数や見積金額が妥当であるか)

以上を総合的に点数化し、一定の基準を満たした事業が採択候補となります。その上で、特に重視されるポイント(加点要素)として次のような要素が挙げられています。

  • DX取り組み領域の戦略性: 観光DXにおける重点3領域(①旅行者の利便性向上・周遊促進、②観光産業の収益・生産性向上、③観光地経営の高度化)に資する事業であること。これらの領域(例:多言語観光サイトやデジタルマップ整備、宿泊施設のPMS導入やレベニューマネジメント、DMOによるCRM/DMP活用等)は観光DX推進の中核と位置付けられており、該当する取り組みには優先的に支援が行われます。
  • 地域一体となった事業推進: 地方自治体・DMO・観光協会・観光事業者など複数の関係者が連携し、地域ぐるみでDXに取り組む事業であること。単独の企業よりも、地域内で協働体制を築いている計画の方が波及効果が高く評価されます。例えば自治体やDMOがハブとなり、複数の観光事業者(宿泊施設や観光施設等)を巻き込んでデータ基盤を構築するようなプロジェクトは加点対象です。
  • 明確な成果目標と持続可能性: 数値目標となるKPIを設定し、プロジェクト終了後にその成果を検証できること。また、専門人材の支援を通じて得た知見を活かし、補助事業終了後も自社・地域内でDXの取り組みを継続発展させる計画が示されていること。

審査では単なるIT導入提案ではなく、「なぜそのDXが必要なのか」「それによって何を達成したいのか」が明確になっているかが問われます。観光庁の掲げる事業目的をよく理解し、地域の実情に即した説得力のある計画を作ることが重要です。その上で上記のような加点要素を押さえられれば、採択可能性は高まるでしょう。

申請時の注意点

最後に、申請準備・事業実施にあたっての留意事項をまとめます。

  • 交付決定前の事前着手は禁止: 補助金交付の正式決定通知(交付決定)を受ける前に、関連する契約や支払いなど事業に着手した場合、その経費は補助対象になりません。採択通知が届いても交付決定ではないため、必ず交付決定を待ってから契約・発注等を行うようにしましょう。もし交付決定前に支出が発生してしまうと、その部分は全て自己負担となります。
  • 専門人材の選定と確保: 補助事業の中核となる専門人材は、申請段階で具体的な候補者を想定し、同意書を交わしておく必要があります。専門人材が途中で見つからない・変更になる等の事態は計画不備と見なされかねません。また要件に記載の通り、自組織の社員ではなく外部人材であること、そして反社排除要件を満たすことを改めて確認してください。公募要領の様式には専門人材本人の署名が必要な書類もありますので、事前に十分な打ち合わせと合意形成を行っておきましょう。
  • 人件費の算定方法: 専門人材に支払う人件費は、公募要領で定められた算定ルールに沿って見積もる必要があります。基本は「時間単価 × 従事時間数 + 交通費 + 宿泊費」で算出し、申請時には予定時間数に基づく見込み額を計上します。時間単価の設定にあたっては、過去の実績やスキルに見合った適正額を算出し、可能であれば見積書等で客観的根拠を示すことが望ましいです。また専門人材が遠方から来訪する場合の宿泊費は「国家公務員等の旅費支給規程」に基づく上限額までしか補助されません(超える分は自己負担)。契約形態によっては日額単価での計算も可能ですが、その場合もガイドライン上の時間単価換算で上限が設定されています。いずれにせよ国の定める基準額を超過する部分は補助されない点に注意して予算を組みましょう。
  • 事業期間と実績報告: 補助事業の実施期間は交付決定後から2025年12月19日(金)までと定められています。この日までに事業を完了し、実績報告書を提出しなければなりません。タイトなスケジュールとなる可能性がありますので、計画策定時からスケジュール管理には十分配慮してください。事業完了後は事務局による経費精算の審査が行われ、最終的な補助金額が確定します。その後2026年2月頃までに補助金請求手続きを経て振込交付となる流れです。報告書類の不備や経費証憑の不足があると支払いが遅れる原因にもなりますので、日頃から領収書や作業記録を整理しておき、期限内に漏れなく提出できるようにしましょう。

以上の点を踏まえ、綿密な準備と正確な申請手続きを行うことが、採択への第一歩です。不明点があれば遠慮なく事務局へ問い合わせ、あるいは専門家の力を借りることも検討してください。

まとめ

観光DX補助金【専門人材による伴走支援型】は、デジタル化の専門家のサポートを得ながら観光地域のDXを推進できる心強い制度です。最大800万円の手厚い補助を受けられる反面、申請には詳細な計画立案や関係者調整、専門人材の確保など高度な準備が求められます。公募要領を熟読し、要件を満たす計画を練り上げることで、地域の観光産業の革新につながるチャンスとなるでしょう。

当事務所では行政書士として本補助金の申請支援を承っております。お気軽にご相談ください。

加えて当事務所では、より高品質なサービスを提供すべく 提携先の行政書士とともに、単独受任時と変わらない報酬での共同受任にも応じています。
提携先事務所:crenlylaw.com


代表挨拶

藤原七海

行政書士藤原七海事務所の藤原です。
当事務所では補助金申請のサポートに力をいれております。
補助金申請のお手続きに何かお困りごとがある方はお気軽にご相談ください。

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