デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)を活用して顧客提案を広げたいITベンダーにとって、最初の関門がIT導入支援事業者(いわゆる「ベンダー登録」)と、取り扱う製品のITツール登録です。2026年は、登録申請の開始が2026年1月30日から予定されており、準備の早さと正確さが成果を左右します。
本記事では、行政書士の実務目線で「どの順番で」「何を準備し」「どこでつまずきやすいか」を、必要書類・手続きフロー・ITツール登録の要点までまとめて解説します。
結論から言えば、2026年の登録対応は“書類を揃える作業”ではなく、登録後に顧客案件を回し続けるための運用設計まで含めたプロジェクトです。登録が完了しても、ツール登録が不十分だったり、顧客からの情報回収・証憑管理が整っていなければ、繁忙期に案件が詰まり、機会損失につながります。だからこそ、登録前の段階で「初回で通す」「登録後に回る」を同時に実現する準備が重要です。
1. まず押さえるべき結論:2026年は“初回で通す”設計が重要
2026年のIT導入支援事業者登録では、登録が認められなかった場合、原則として同一年度内で再申請ができないとされています。
つまり「とりあえず提出→差し戻し前提で直す」という進め方はリスクが高く、初回提出の完成度が重要です。社内稟議や書類取得に時間がかかる企業ほど、差し戻しが続くと簡単にスケジュールが崩れます。
さらに、交付決定の公表が完了した時点で、交付決定を受けた実績がないIT導入支援事業者は、年度中でも資格停止となる場合がある点も見逃せません。
登録“後”の案件化まで見据えて、登録・ツール登録・提案導線を一体で整えるのが実務的な正解です。具体的には、登録と同時に「どのツールで先行登録するか」「どの業種・課題で提案するか」「顧客から何を回収するか」を最低限決めておくと、登録完了後すぐに案件化できます。
2. IT導入支援事業者登録の全体像(フローと申請項目)
2-1. 登録申請のフロー(4ステップ)
登録は、概ね次の流れで進みます。
- 公式サイトから仮登録
- 事務局からIT事業者ポータルのアカウント付与
- IT事業者ポータルから登録申請(※この時点でITツールの先行登録申請が必要)
- 事務局・外部審査委員会の審査後、採否通知
ポイントは3)です。IT導入支援事業者登録と同時に、代表的なITツールを1つ選び、先行登録として申請する必要があります。
「ベンダー登録だけ先に完了させたい」と思っても、2026年はこの設計上、ツール登録準備がないと申請が進みません。先行登録するツールは、最も売れている製品にこだわる必要はなく、むしろ「要件に合致して説明しやすい製品」を選ぶことが実務的なコツです(その後、追加登録でラインナップを拡張できます)。
2-2. 主な入力情報(審査の“見るところ”)
主な入力情報として、要件確認、基本情報・企業実績・財務状況、自社製品・サービス情報、サポート体制、情報セキュリティ対応状況、宣誓事項などが並びます。
実務上は、単に入力するだけでなく、登録後に問い合わせや審査対応が発生する前提で「説明できる状態」に落としておくことが大切です。例えば、サポート体制は「受付窓口がある」だけでなく、受付時間、一次対応と二次対応の分担、障害時の連絡導線まで整理しておくと、登録後の顧客対応にも直結します。
3. 必要書類(添付書類)の要点:代替不可・形式厳格
3-1. 代替書類は不可
申請に必要となる情報(入力情報および添付書類)について、代替書類は一切認められないと明記されています。
「似た資料で代用できるはず」という自己判断が、差し戻し・不認定の典型要因です。必ず規定どおりに揃えます。特に、登記簿の発行日や納税証明書の種類は、見落としが多いポイントです。
3-2. 法人(単独)の添付書類(代表例)
法人単独の場合、たとえば以下が求められます。
- 履歴事項全部証明書(発行から3か月以内)
- 税務署発行の法人税の納税証明書(その1 又は その2)
- 直近分の貸借対照表・損益計算書(対象年度、借入金、資本金、売上高、経常利益など確認できるもの)
- 販売実績一覧(事務局HPの様式)
納税証明書は種類が複数ありますが、登録申請で有効とされるのは(その1)または(その2)である点も注意です。
また、財務諸表は「提出できれば何でもよい」ではなく、要領上、借入金や資本金、売上高、経常利益等が確認できることが想定されています。
形式や記載項目の不足がないか、提出前の点検が重要です。
3-3. コンソーシアムの場合(協定書)
コンソーシアム(幹事社)の場合は、法人単独の添付書類に加えてコンソーシアム協定書の提出が求められます。
提出時点で署名押印済みである必要は必ずしもないとされています。
ただし、協定書は“形だけ”では足りません。登録後に案件を回すために、責任分界(窓口、請求、障害時対応、情報管理、再委託など)を実態に合わせて設計しておくことが重要です。ここが曖昧だと、顧客対応や事務局照会の際に「誰が責任を持って回答するのか」がぶれ、運用が止まります。
3-4. 追加資料を求められることがある(本人確認書類など)
審査において必要に応じて、代表者・役員・従業員の本人確認書類等の追加資料提出を求められることがあり、提出できない場合は登録を認めない場合がある、とされています。
「追加資料が来たら考える」では間に合わないケースがあるため、提出可能な体制(誰が集め、どこに保管し、誰が提出判断するか)を事前に決めておくのが安全です。特に、役員が複数いる企業は、本人確認書類の収集に意外と時間がかかります。
4. ITツール登録の全体像:先行登録と追加登録の違い
4-1. 1つ目は“先行登録”として同時申請
1つ目のITツール登録申請は、IT導入支援事業者の登録申請と同時に行う(先行登録申請)とされています。
この先行登録では「代表的なITツール」を1つ選び、情報入力して申請します。
さらに先行登録の対象は、原則として
- 大分類Ⅰカテゴリー1(ソフトウェア) または
- 大分類Ⅴカテゴリー10(サイバーセキュリティお助け隊サービス)
のいずれかとされています。
4-2. 2つ目以降は、登録完了後に幅広く追加可能
IT導入支援事業者登録が完了した後、2つ目以降のITツール登録申請が可能となり、カテゴリーは問わないとされています。
したがって実務では、先行登録は「最も説明しやすく要件に合う製品」に絞り、登録完了後に機能拡張・データ連携・役務・ハードウェア等を段階的に追加していくのが合理的です。追加登録は、顧客の提案幅を広げるための“商品設計”そのものなので、導入実績が見込める順に優先順位をつけると効率的です。
4-3. ITツールの大分類・カテゴリー(整理)
ITツールは大分類・カテゴリーに整理されており、例えばソフトウェア、オプション(機能拡張/データ連携/セキュリティ)、役務(導入コンサル/設定/保守)、ハードウェア、サイバーセキュリティお助け隊サービスなどがあります。
登録申請では、カテゴリーごとの要件を確認し、適切なカテゴリーに申請する必要があるとされています。
この「カテゴリー判断」が曖昧なままだと、登録後の顧客提案で「これは補助対象外だった」「この費目で出せない」といったトラブルになりやすいので、早い段階で整理しておくことが重要です。
5. ITツール登録で“落ちる”典型:対象外となるツール例
登録要件を満たすソフトウェアであっても、次のようなものはITツール登録の対象外とされ得ます(代表例)。
- 単純計算して帳票表示するだけ等、単一機能しか有しないもの
- 生産性向上ではなく、販売商品に付加価値を付ける目的のもの
- 恒常的に利用されないもの(緊急時の一時利用等)
- ハードウェア製品そのもの
- 大幅なカスタマイズが必要となるもの
- 製品が完成していない・一般販売されていないもの
「機能は優れているが、登録要件の言葉に落ちていない」「製品提供形態や価格資料が説明できない」といった“説明不足”で止まるケースも多いため、申請書面と添付資料の整合が重要です。特にAI搭載ツールの場合、顧客データの取扱いや学習有無など、顧客側が不安を持つポイントが多いため、申請用資料と営業用資料で同じ説明ができるよう整えておくと、後工程が非常に楽になります。
6. ITツール登録の添付資料:機能説明資料など“説明責任”がある
ITツール登録では、電子申請で行い、登録方法の詳細は手引きを参照する旨が示されています。
また、申請時には機能説明資料等の提出が求められ、ソフトウェアの場合、製品名・プラン名・開発メーカー名・画面キャプチャ等、必要項目が定められています。
加えて、データ連携ツールでは、仕様・機能一覧・構成図・提供形態・プラン・価格資料等について、事務局から説明を求められた場合は追加資料で説明すること、とされています。
つまり、ITツール登録は「入力して終わり」ではなく、“そのツールが要件を満たすことを説明できる資料づくり”が本体です。行政書士としては、要件を読み解き、資料の表現を整え、審査で突っ込まれやすいポイントを先回りして補足することで、差し戻しリスクを下げる支援が可能です。
7. 行政書士がサポートできる領域(実務で効くポイント)
行政書士の支援価値は、単なる入力代行ではありません。特に2026年は再申請制限があるため、次のような“事故を減らす支援”が効きます。
- 必要書類の過不足・形式チェック(発行日、種類、その1/その2の選択、財務諸表の必須項目確認など)
- コンソーシアム協定書の設計・作成支援(責任分界・情報管理・窓口の明確化)
- 追加資料要請への即応設計(本人確認書類等の提出体制整備)
- ITツール登録に必要な資料の作成支援(ツールが要件に適合しているかのレビュー、機能説明資料・価格説明資料の作成支援)
「書類が揃わない」「社内から情報が集まらない」「どのツールを先行登録にするべきか迷う」といった停滞を、チェックリスト化とタスク分解で前に進めるのが実務的な支援の要点です。加えて、登録後に顧客申請を複数件回す段階では、証憑管理(契約書・請求書・支払証憑の一貫性)と期限管理がボトルネックになります。登録段階で“運用の型”まで用意しておくと、繁忙期のトラブルを大幅に減らせます。
8. 申請前チェックリスト(最低限ここまで整える)
- 申請開始日(2026/1/30予定)から逆算してスケジュール化
- 先行登録に使う“代表的ITツール”を1つ決める(カテゴリー1 or 10)
- 法人:履歴事項全部証明書(3か月以内)、納税証明書(その1/その2)、財務諸表、販売実績一覧を揃える
- 代替書類不可を前提に、取得先・発行日・形式まで確認
- 追加資料(本人確認等)に備えた社内体制を作る
- ITツールの機能説明資料(製品名、プラン名、画面キャプチャ等)を用意
- 対象外になりやすいツール要件(単一機能、未完成、カスタマイズ前提等)に該当しないか自己点検
まとめ:ベンダー登録×ITツール登録は“書類と説明資料の品質”で決まる
2026年のIT導入支援事業者登録は、仮登録→ポータル→本申請の流れで進み、申請時にITツールの先行登録が必要です。
また、添付書類は代替不可であり、必要に応じて追加資料(本人確認書類等)を求められ、提出できない場合は登録が認められないこともあります。
そして、不認定時の再申請制限も踏まえると、「初回で通すための準備」を丁寧に行うことが最重要です。
行政書士としては、必要書類の形式・期限管理、協定書、追加資料対応体制、そしてITツール説明資料の要件適合まで含め、登録“後”に案件を回せる状態づくりを支援できます。
もし「先行登録に選ぶツールをどう決めるべきか」「カテゴリー判断が難しい」「機能説明資料をどう作ればよいか」といったお悩みがあれば、まずは現状の製品・販売形態・サポート体制をヒアリングし、最短で登録に乗せるための段取りを一緒に整理していくのが有効です。
代表挨拶

行政書士藤原七海事務所の藤原です。
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