近年、通信環境や配信プラットフォームの発展、働き方の多様化などを背景に、映像送信型性風俗特殊営業(ライブチャット事業等)および無店舗型性風俗特殊営業(デリバリーヘルス等)に新規参入する事業者が増えています。
これらの業態は、店舗型営業と比べて、内装投資や店舗設備を抑えられることから、比較的スモールスタートが可能です。一方で、実務上は、開業準備の早い段階で次の問題に直面します。
- そもそも営業所(事業所)として使える物件が見つからない
- 「事務所用途可」の物件でも、使用承諾書が取れず届出が進まない
- 自宅・バーチャルオフィスを検討したが、警察署対応の説明が成り立たない
- 物件契約後に問題が発覚し、解約・再契約で時間と費用が膨らむ
本記事では、行政書士の実務経験を踏まえ、営業所(事業所)選定において何が審査・確認のポイントになるのかを、制度の建付けと警察署実務の観点から整理します。あわせて、営業所確保の現実的選択肢として検討されることが多いレンタルオフィスの位置付けや注意点も解説します。
1.映像送信型性風俗特殊営業・無店舗型性風俗特殊営業でも「営業所」は必須
(1)「無店舗型」「映像送信型」という言葉が生む誤解
「無店舗型」「映像送信型」という名称から、「店舗がないのだから、営業所も不要なのでは」と誤解されることがあります。しかし、風営法上の届出制度は、営業の実態を行政(公安委員会・警察署)が把握し、適正な運営を担保することを目的としています。そのため、営業形態がオンライン中心であっても、営業を統括・管理する拠点(営業所)を置くことが制度上の前提です。
(2)届出における営業所の意味
届出では、営業所所在地を記載するだけでなく、実務上は以下の点を説明できることが重要です。
- 事業の管理責任者がどこで管理を行うか
- 届出書類・契約書類・従業者関連資料などをどこで保管するか
- 連絡体制(電話・メール・事務処理)をどこで行うか
- 警察署から照会があった場合に、どこで対応できるか
つまり、営業所は「名刺に載せる住所」ではなく、営業の管理拠点として実態を伴う必要がある、という点が重要です。
(3)「説明可能性」が物件選定の核心になります
届出の審査・確認は、条文の形式要件だけでなく、警察署が運用上確認したい事項に対して、矛盾なく説明できるかが実務上の分岐点になります。
物件を選ぶ際は、賃料や立地だけでなく、
- 「営業所としての実体を説明できるか」
- 「使用承諾書を確実に提出できるか」
を軸に検討することが、手戻りを避ける最も確実な方法です。
2.なぜ営業所物件探しが難航するのか(実務の構造)
(1)賃貸契約・管理規約における業種制限の壁
一般的な賃貸物件では、賃貸借契約書・管理規約に、
- 風俗営業等の使用禁止
- 公序良俗に反する目的での使用禁止
が定められていることが多く、性風俗関連業態は、審査段階で除外されやすい傾向にあります。
「接客行為がない」「顧客の出入りがない」と説明しても、オーナー・管理会社は、近隣対応や建物ブランド、契約違反リスクを懸念し、業態だけで不可と判断するケースが少なくありません。
(2)用途地域・距離制限について
店舗型営業では、用途地域や保全対象施設からの距離制限が問題となる場面があります。
しかし、映像送信型性風俗特殊営業および無店舗型性風俗特殊営業については、店舗型とは異なり、用途地域(都市計画法)や学校・病院等の保全対象施設からの距離制限といった要件を満たす必要はありません。
この点を誤解したまま「この地域では無理」と判断すると、本来選べたはずの選択肢を狭めてしまい、物件確保がさらに困難になります。
(3)使用承諾書は「届出時点で必須」
映像送信型性風俗特殊営業・無店舗型性風俗特殊営業の届出において、営業所として使用する物件について、所有者または管理権限者の使用承諾書は、届出時点で必ず必要です。
賃貸借契約書に「事務所利用可」と書いてあっても、それだけでは足りません。
警察署実務では、
- 所有者(または管理権限者)が当該業態での使用を理解しているか
- 営業所としての使用が契約上許容されるか
- 契約書の使用目的と実際の営業内容が整合するか
が確認され、使用承諾書の提出が前提として扱われます。
したがって、物件選定の段階で、
- 使用承諾書の取得が可能なスキームか
- 誰が承諾権者か(所有者・管理会社・転貸人等)
- 文面・名義・押印が整うか
を見落とすと、届出直前になって頓挫するリスクが高まります。
3.自宅・バーチャルオフィスが営業所として不適切な理由
(1)自宅兼事務所は「区分」と「契約整合性」が課題
自宅を営業所にする場合、課題は大きく2つです。
- 賃貸借契約との整合性
住居専用契約で事業利用を行うと、契約違反となる可能性があります。
結果として、オーナーからの承諾が得られず、使用承諾書の提出ができません。 - 生活空間と業務空間の明確な区分
現地確認や説明の場面で、「営業所としての実体」が問われます。
ワンルーム等で生活用品と業務用品が混在していると、営業所としての説明が困難となり、是正を求められるリスクがあります。
(2)バーチャルオフィスは認められていません
住所のみを利用するバーチャルオフィスは、映像送信型性風俗特殊営業・無店舗型性風俗特殊営業の営業所として認められていません。
理由は明確で、
- 営業所としての実体が存在しない
- 常時使用できる専有区画がない
- 現地確認に対応できない
- 管理責任・資料保管・事務処理の実態が説明できない
ためです。
「郵便転送がある」「会議室が借りられる」という仕様があっても、営業所の実体(専有性・継続性・管理性)が担保できない場合、営業所としての説明が成立しません。
したがって、バーチャルオフィス前提での届出は、実務上不可と整理すべきです。
4.届出に使えるレンタルオフィスの条件(適するケース・注意点)
レンタルオフィスは、条件が整えば、営業所確保の現実的選択肢となり得ます。
ただし、重要なのは「レンタルオフィスかどうか」ではなく、営業所としての実体と使用承諾書が成立するかです。
(1)レンタルオフィスが検討しやすい典型例
- 少人数体制で、管理・連絡・書類対応が中心
- 固定費を抑えて開業し、段階的に拡大したい
- 立地(アクセス)を重視したい
- 自宅利用や一般賃貸が難航している
こうしたケースでは、営業所としての実体を作りやすく、物件確保が進むことがあります。
(2)確認すべき実務ポイント(チェックの観点)
レンタルオフィスでも、次がクリアできない場合は不適切です。
- 専有区画があるか(施錠・独立性)
- 利用規約上、当該業態が許容されるか
- 使用承諾書を、承諾権者名義で出せるか
- 図面・表示・設備の説明が可能か
- 必要な資料保管・事務処理が継続して行えるか
「短期契約だから大丈夫」と考えるのではなく、届出時点で必要な要件を満たし、警察署に対して矛盾なく説明できるかという観点で判断することが重要です。
5.よくあるご質問(FAQ)
Q1.映像送信型性風俗特殊営業・無店舗型性風俗特殊営業の「営業所(事業所)」は必ず必要ですか?
A.はい。いずれも届出制度上、営業を統括・管理する拠点としての営業所(事業所)を前提としています。「オンライン中心」「無店舗」という事情があっても、営業所の所在地を定め、書類管理・連絡体制・管理責任者の所在を説明できる状態にしておく必要があります。
Q2.レンタルオフィスでも営業所(事業所)として届出できますか?
A.条件を満たせば可能です。重要なのは「レンタルオフィスかどうか」ではなく、①営業所としての実体(専有性・継続性・管理性)があること、②使用承諾書を届出時点で提出できること、③利用規約上当該業態の利用が許容されていること、の3点です。これらが揃わない場合、レンタルオフィスであっても届出対応が難しくなります。
Q3.使用承諾書はレンタルオフィスでも必要ですか?
A.はい。実務上、使用承諾書は届出時点で必須です。賃貸借契約書に「事務所利用可」と記載がある場合でも、それだけで足りないことがあります。警察署では、当該物件が映像送信型性風俗特殊営業・無店舗型性風俗特殊営業の営業所として使用されることを、所有者または管理権限者が認識し承諾しているかを確認する運用が一般的です。そのため、承諾権者(所有者・賃貸人・転貸人・管理会社等)を特定し、名義・押印を含めて整った承諾書を用意できるかを事前に確認することが重要です。
Q4.「個室」ならレンタルオフィスは基本的に大丈夫ですか?
A.個室であることは重要な要素ですが、それだけで十分とは限りません。営業所として求められるのは、単なる作業スペースではなく、①書類・データ管理を継続して行えること、②外部から見て管理拠点として説明できること、③現地確認等に対応できること、です。加えて、利用規約で業種制限がある場合や、承諾権者から使用承諾書が出ない場合は、個室であっても届出に使えません。
Q5.コワーキングスペース(フリーアドレス)でも届出できますか?
A.できません。 フリーアドレス型のコワーキングスペースは、専有区画が存在せず、営業所として求められる実体(専有性・継続性・管理性)を満たしません。また、警察署による確認(現地確認を含む)においても、「営業を統括・管理する拠点」としての説明が成立しないため、営業所(事業所)としては認められない運用です。営業所として届出を行う場合は、施錠可能な専有個室等、営業所としての実体を確保できる形態を前提に検討してください。
Q6.バーチャルオフィスは営業所として認められますか?
A.いいえ。バーチャルオフィス(住所利用のみ)は営業所として認められていません。営業所としての実体がなく、常時使用可能な専有区画や管理体制を説明できないためです。「郵便転送がある」「会議室が使える」といった仕様があっても、営業所として必要な専有性・継続性・管理性が担保されない限り、届出の前提を満たしません。
Q7.自宅を営業所(事業所)にできますか?
A.ケースによりますが、慎重な検討が必要です。賃貸物件の場合は賃貸借契約との整合性(住居専用か、事業利用可か)が重要で、使用承諾書の取得が実務上のハードルになります。また、現地確認等を想定すると、生活空間と事業空間が明確に区分されていることが求められます。ワンルーム等で混在している場合は説明が難しくなる傾向があります。
Q8.用途地域(都市計画法)や学校・病院からの距離制限は確認が必要ですか?
A.映像送信型性風俗特殊営業・無店舗型性風俗特殊営業では、用途地域や学校・病院等の保全対象施設からの距離制限といった要件を満たす必要はありません(店舗型の規制と混同しないことが重要です)。ただし、物件の管理規約・契約条項上の利用制限は別問題ですので、規約・契約の確認は必須です。
Q9.レンタルオフィス契約を先にしても大丈夫ですか?
A.「契約前」に確認すべき事項が多いため、先に契約してしまうのはリスクがあります。特に、使用承諾書の取得可否、承諾権者の名義、利用規約の業種制限は、契約後に問題化しやすいポイントです。届出要件と説明可能性を整理してから契約することで、解約・再契約といった手戻りを防げます。
6.全国対応と物件紹介エリアについて
当事務所では、映像送信型性風俗特殊営業・無店舗型性風俗特殊営業に関するご相談および届出サポートについては全国対応しております。オンラインでの打ち合わせや書類対応により、所在地にかかわらずご相談が可能です。
一方で、当事務所が現在、実務上の情報把握と紹介体制を整えている物件は、主として次のエリアです。
- 台東区周辺(上野・入谷・御徒町エリア)
- 豊島区周辺(池袋エリア)
物件紹介エリア外であっても、
- 物件選定の考え方の整理
- 使用承諾書取得の可否の検討
- 営業所としての説明可能性の確認
など、制度・実務の助言は全国対応しています。
まとめ
映像送信型性風俗特殊営業・無店舗型性風俗特殊営業において、営業所(事業所)の確保は、開業準備の最初の分岐点です。
特に重要なのは、
- 使用承諾書は届出時点で必須
- バーチャルオフィスは営業所として認められていない
- 用途地域・距離制限は不要(店舗型とは異なる)
という点を前提に、「営業所として実体があり、矛盾なく説明できる物件」を選ぶことです。
物件を先に契約してから届出要件を確認すると、承諾が取れない・説明が通らないといった理由で、時間と費用のロスが発生し得ます。
営業所選定は、早い段階で専門家と一緒に整理することをお勧めします。
代表挨拶

行政書士藤原七海事務所の藤原です。
当事務所では風営法関連のサポートに力をいれております。
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