1.はじめに|「IT導入補助金」から“デジタル化・AI”へ。制度理解のコツは「実務のつまずき」を先に潰すこと
2026年度(令和8年度)から、従来のIT導入補助金は「デジタル化・AI導入補助金」へと名称が改められ、AI活用・高度なデジタル化をより前面に出す制度運用が想定されています。
ここで最初に押さえておきたいのは、ものづくり補助金等のような“長文の事業計画書(A4数枚)の提出が必須”というタイプとは性格が違うという点です。IT導入補助金系は、実務上は「申請画面での入力」「登録済みITツールの選定」「証憑整備」「実績報告」など、運用要件の積み上げで結果が決まることが多い補助金です。
その一方で、申請画面には、導入の背景や導入効果を説明する短文入力(導入目的・現状・改善内容など)を求められる運用が一般にあり、ここが曖昧だと差戻し・不備・不採択につながりやすいのも事実です。
本記事では、2026年制度の方向性を踏まえつつ、「申請時に何を整えるべきか」「どこで詰まりやすいか」を、専門家の実務目線で整理します。
2.制度の全体像|最大450万円の補助で「小さなDX」から「業務改革」まで狙える
デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)の魅力は、業務に直結するIT投資を、比較的取り組みやすい枠組みで後押しする点にあります。補助上限は最大450万円規模が想定され、クラウド利用料(最大2年分)や導入関連費まで含めた導入設計が可能になります(枠・条件の最終確定は公募要領に従います)。
補助対象となりやすい経費のイメージ
一般に、以下のような費用が対象となりやすい整理です。
- ソフトウェア購入費/クラウド利用料
- 導入関連費(初期設定、環境構築、データ移行、研修、運用支援等)
- 枠により、ハードウェアやセキュリティ対策関連の一部
重要なのは、「何を入れるか」ではなく、“その導入が業務改善につながるか”です。とくに2026年は、デジタル化とAI活用の関係性がより強く意識されるため、導入目的とツール機能の整合性が問われやすくなります。
3.2026年に向けた注目点|AI機能の見える化と、登録・提出書類の厳格化
3-1.AI機能の搭載は「申告」し、登録後に表示される想定
デジタル化・AI導入補助金2026のHPでは、AIを用いた機能を搭載するソフトウェアの場合、ITツール登録申請時にその旨を申告し、登録完了後はツール検索画面等で「AI機能搭載」の表示が行われる方向が示されています 。
またAIの定義として、次の区分が明示されています 。
- 生成AI:文章・画像・プログラム等を生成できるAIモデルに基づくAI
- 生成AI以外のAI技術:分類・分析・判断・予測等を行うAIモデルに基づくAI
申請者(中小企業)側の実務では、ここがとても大切です。
「AIを入れたい」だけでは説得力が弱く、次のように業務とAI機能の対応関係を説明できると強くなります。
- 問い合わせ一次対応 → AIチャットボットで受付・分類・回答候補提示
- 紙帳票の入力 → AI-OCRで読み取り、システムへ連携
- 文書作成(提案書・社内通知・FAQ)→ 生成AIで下書き生成、最終確認は人
- 需要予測・発注最適化 → 予測モデル(生成AI以外)で推定し、在庫・発注に反映
「どの業務を、どんなAIで、どう改善するか」を短い言葉で言い切れる状態が、申請時の入力でも効いてきます。
3-2.支援事業者登録の提出書類が明確化(申請者にも“スケジュール影響”がある)
添付資料は主に、IT導入支援事業者・ITツールの事前登録や登録要件の見直しについてまとめたものです 。
支援事業者側では、直近分の財務諸表や本人確認書類等の提出が求められる運用が明記されています。例として、法人は損益計算書・貸借対照表、個人事業主は青色申告決算書または収支内訳書が必要、法人は履歴事項全部証明書(3か月以内)、個人は運転免許証等または住民票(3か月以内)といった記載があります 。
ここは一見、申請者には関係が薄く見えますが、実務では大きく影響します。
支援事業者の登録が遅れる/扱うツールの登録が間に合わない=申請ができないという形で、スケジュールに直撃しやすいからです。したがって申請者としては、「公募が始まってから動く」のではなく、早めに支援事業者へ相談し、導入候補ツールと申請時期を前倒しで確認するのが安全策になります。
4.ツール登録の実務ポイント|「機能説明資料」「価格説明資料」など、整合性がすべて
2026年の運用を理解する上で、ITツール登録で求められる資料の考え方が参考になります。登録要領では、ITツール登録申請時に提出する資料として、機能説明資料・価格説明資料・(場合により)申請価格理由書などが整理されています 。
4-1.機能説明資料で見られること(要点)
たとえば大分類Ⅰソフトウェアでは、正式な製品名、プラン名、開発メーカー名、画面キャプチャ、機能一覧・機能概要図、業務フロー図、利用方法などが確認できる必要があり、AI機能(生成AI/それ以外)の搭載がある場合は明記することが求められています 。
申請者目線では、「導入の説明(短文入力)」を作る際に、支援事業者が提示するこれら資料と齟齬が出ないようにするのがポイントです。
つまり、申請画面に書く導入目的・改善内容は、ツールの機能説明と同じ方向を向いている必要があります。
4-2.価格説明資料でつまずきやすい点
価格説明資料では、見積書は不可とされ、料金表・カタログ等の価格がわかるもの、税抜/税込の明記、上限の定めがある曖昧表記(例:1,000円~)になっていないこと、内訳との整合などが挙げられています 。
ここは差戻しが多い典型ポイントです。申請者側でも、提示される価格情報が「申請内訳」と一致しているか、必ず確認しましょう。
5.申請の基本フロー|“申請して終わり”ではなく「実績報告まで」が補助金事業
IT導入補助金系は、概ね次の流れで進みます(詳細は公募要領・マニュアルに従います)。
- 現状業務の棚卸し(どの業務がボトルネックか)
- 導入方針の決定(改善対象を絞る)
- IT導入支援事業者の選定(扱えるツール・支援範囲を確認)
- 登録済みITツールから導入構成を確定
- 申請画面の入力・提出(短文入力含む)
- 交付決定後に契約・発注・支払い
- 導入・利用開始、社内定着
- 実績報告(証憑・導入証跡)
- 補助金の確定・受領
ここで最も重要な注意点は、一般に交付決定前の契約・発注は対象外リスクになり得ることです(扱いは公募要領に従う)。「先に発注してしまった」「支払いを済ませてしまった」は、後から取り返しがつかないケースがあります。スケジュール管理は支援事業者と必ずすり合わせましょう。
6.「計画書」ではなく「申請画面の短文入力」を強くする方法|審査側が見たいのは“必然性”と“効果”
本制度で誤解されがちなのが、「計画書を作らなくていい=準備不要」という認識です。実務上は逆で、短い入力欄で“筋の通った説明”をできるかが結果を左右します。ポイントは次の3つです。
6-1.現状は“抽象語”ではなく“業務の事実”で書く
- NG:「DXを推進したい」「業務効率化したい」
- OK:「請求書発行が月300件。Excel転記と二重チェックに月40時間」「問い合わせが1日平均25件で、担当者の稼働が圧迫」
短文でも、数字(概算で十分)を置くと説得力が跳ね上がります。
6-2.導入内容は「機能→業務→効果」で一行にする
例:
- 「AI-OCRで請求書入力を自動化し、入力工数を月40時間→15時間へ削減」
- 「AIチャットボットで一次対応を自動化し、電話・メール対応の集中時間を確保」
- 「生成AIで社内文書の下書きを自動生成し、レビューに時間を回す」
AIは派手さより再現性が重要です。「全自動化」よりも、「下書き生成→人が最終確認」のように運用に落とすと現実味が出ます。
6-3.導入後の定着(運用)を一言入れる
IT導入の失敗は「使われない」ことです。
短文でも「研修実施」「運用ルール策定」「入力責任者の設定」など、定着の一手を入れると評価されやすい傾向があります。
7.よくある落とし穴|採択以前に“差戻し”を防ぐのが最優先
7-1.登録済みツールではない/支援事業者が扱えない
本制度の根幹は「登録済みツール+支援事業者と申請」です。
「導入したいツールがある」→「登録されていない」→「申請不可」という事故は珍しくありません。候補ツールが決まったら、まず登録状況と対応ベンダーを確認しましょう。
7-2.価格情報と申請内訳が噛み合っていない
添付資料でも、価格説明資料とシステム入力内訳の整合が強調されています 。
ここがズレると差戻しや追加資料要求につながりやすいため、申請者側も「何にいくら計上しているか」を理解しておくと安全です。
7-3.導入効果が“ふわっとしている”
「楽になる」「便利」は通りません。
工数・件数・ミス率・リードタイムなど、最低限どれか1つを数字で置き、導入後の変化を見せることが重要です。
8.申請前チェックリスト|これだけ揃えば短文入力でも強くなる
- 改善したい業務を1~2個に絞れている
- 現状の工数・件数・ミスの“概算数字”がある
- ツール機能が「業務→効果」に結びついて説明できる
- AIの場合、生成AI/分析AIなどの使い分けが言語化できる
- 登録済みツールで、支援事業者が対応可能
- 交付決定前後の契約・発注タイミングを理解している
- 実績報告で必要な証憑(契約・請求・支払・導入完了の証跡)を残す運用ができる
9.まとめ|補助金を「DXの入口」から「成果が出る運用」へつなげる
デジタル化・AI導入補助金2026は、最大450万円規模の補助により、中小企業のDX・AI導入を現実的な投資として後押しする制度です。
ただし、成功の鍵は「計画書の作り込み」ではなく、申請画面の短文入力を、業務の事実と効果で“筋の通った説明”にすること、そして導入後の実績報告まで含めた運用管理にあります。
- 現状は業務の事実(数字)で示す
- 導入は「機能→業務→効果」で言い切る
- AIは使いどころを絞るほど強い
- 証憑・内訳整合・登録状況の確認で差戻しを防ぐ
この型で進めれば、初めての申請でも無理なく整理でき、導入効果も出やすくなります。
代表挨拶

行政書士藤原七海事務所の藤原です。
当事務所では補助金申請のサポートに力をいれております。
補助金申請のお手続きに何かお困りごとがある方はお気軽にご相談ください。
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