※本稿は、交付規程(令和8年1月16日施行)に基づき制度骨子を解説しています。採択“率”の数値は交付規程には掲載がないため、申請実務で評価されやすい形に整えるための観点を中心に記載します。
1. セキュリティ対策推進枠2026とは(支援事業者が押さえるべき制度の狙い)
セキュリティ対策推進枠は、中小企業・小規模事業者等がサイバーセキュリティ対策を強化するために、所定のITツールを導入する費用の一部を補助する枠組みです。サイバーインシデントにより事業継続が困難になるなど、生産性向上を阻害するリスクを低減し、ひいては供給制約や価格高騰といった潜在的リスクの低減にもつなげる、という政策目的が明記されています。
ここで重要なのは、単に「ウイルス対策を入れればよい」という話ではなく、事業継続・損失抑止=生産性の確保という文脈で補助が設計されている点です。IT導入支援事業者は、この“制度の狙い”を理解し、申請者(中小企業側)の説明を制度趣旨に沿う形へ整えることが、採択可能性を高める第一歩になります。
2. 対象となるITツールの要件(「お助け隊」限定を見落とさない)
本枠で導入するITツールは、交付規程上「サイバーセキュリティお助け隊サービス」を指し、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の『サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト』掲載サービスに限定されます。
さらに、機能要件として同リスト掲載サービスであることが明記されています。
支援事業者側の実務では、ここが最頻出の落とし穴です。顧客(申請者)が求める内容が高度であっても、枠の要件と一致しないサービスを提案すると、そもそも土俵に乗りません。したがって、
- 提案前に「お助け隊リスト該当」を一次確認
- 見積・契約・導入計画書の文言も「お助け隊サービス」で統一
- 付帯作業(コンサル、機器販売等)がある場合は、補助対象経費との切り分けを明確化
といった整理が必須です。
3. 補助の範囲(支援事業者が説明で使う“数字”)
本枠の補助額は5万円〜150万円、補助率は1/2以内(小規模事業者は2/3以内)、補助対象経費はサービス利用料(最大2年分)です。
営業・提案では、補助額だけが先行しがちですが、実務上は「対象経費=サービス利用料」である点が重要です。例えば初期費用・機器・工事・教育・コンサル等が混在する提案の場合、顧客に誤解を与えない説明(対象/対象外の峻別)を先に行うことで、後工程の差戻しやトラブルを減らせます。
4. IT導入支援事業者の登録要件と責務(“登録できる”より“登録維持できる”が重要)
交付規程では、IT導入支援事業者は事務局へ登録申請を行い、適格性が審査されたうえで登録されると定められています。
また、登録された支援事業者は、補助事業者に対し、ITツール導入と補助事業遂行を円滑にするための支援を行う責務を負います。
支援内容は「ツールの説明・導入・運用相談」だけではありません。補助金の交付申請、実績報告、事業実施効果の報告など、事務局へ提出する手続の取りまとめ・提出までが業務として規定されています。
つまり、支援事業者に求められる価値は「ツール販売」ではなく、申請〜報告までを通した事務・運用の品質担保です。
さらに、虚偽や不正、責務不履行、所定業務を行っていない等がある場合、事務局は登録取消やITツール登録取消を行えるとされています。
登録取消が行われた場合、当該支援事業者に係る全ての交付申請について交付決定取消が行われ得る、という強い規定も置かれています。
“採択率を語る以前に、支援事業者としての“信用”は手続品質で決まる“ここが2026対応の基本姿勢になります。
5. 申請者(中小企業側)の主な要件:審査で見られる“前提条件”を落とさない
交付規程上、補助対象者(申請者)は、(1)サイバー攻撃による生産性阻害防止に資するITツール導入、(2)国内で法人登記・国内事業実施、(3)求める資料を期限内・指定方法で提出可能、(4)不適当と判断されないこと、の全要件に該当する必要があります。
さらに、交付申請時点の翌事業年度以降3年間の事業計画として、労働生産性を年平均1%以上向上させること、その計画が実現可能・合理的であることが求められます。
ここは「セキュリティ枠なのに生産性?」と感じやすい箇所ですが、交付規程は生産性の計算に「サイバー攻撃リスク低減に伴う売上損失期待値の減少効果」等も含み得ると示しています。
また、一定期間(IT導入補助金2022〜2025)に交付決定を受けた事業者については、賃金引上げ計画(1人当たり給与支給総額の年平均成長率が所定水準以上、従業員への表明等)に関する追加要件が規定されています。
支援事業者は、ヒアリング段階でこれらの前提条件を棚卸しし、満たせない論点を早期に潰すことが、結果として採択可能性を上げます。要件未充足は“加点ゼロ”ではなく、“失格”になり得るためです。
6. 申請〜実績報告までの流れ:採択を左右するのは「手続の一貫性」
交付申請は原則として、補助事業着手前に、IT導入支援事業者の確認を受けたうえで電磁的方法により行う、とされています。
また各種手続(交付申請、計画変更、実績報告、効果報告等)は、原則として電磁的方法で行い、支援事業者は取りまとめ・提出を担う構造です。
ここから逆算すると、「採択率を高めるポイント」は、審査書類の“作文テクニック”というより、手続全体で矛盾しない設計にあります。例えば、
- 申請時の導入目的(リスク・損失・業務影響)
- サービス選定理由(なぜそのお助け隊か)
- 導入後の運用体制(誰が何を、いつ、どう回すか)
- 実績報告で提出される利用実態(契約・利用期間・運用ログ等)
- 効果報告で示すKPI(インシデント減・復旧時間短縮・工数削減 等)
これらが一貫しているほど、審査上の説明コストが下がり、差戻しや確認事項が減り、結果的に通りやすくなります。
7. 採択率(実務上の採択可能性)を高める“具体策”10選
ここからは、交付規程の要求水準に沿って、支援事業者が実務で改善しやすいポイントを整理します。
①「制度目的」に沿った課題設定にする
本枠の目的は、インシデントによる事業継続困難など、生産性阻害リスクの低減です。
したがって、課題は「セキュリティが不安」では弱く、
- 受注停止の可能性
- 顧客対応停止による売上影響
- 復旧に要する人件費・外注費
など“事業影響”へ接続して書けるほど説得力が増します。
②「お助け隊リスト該当」を冒頭で明示する
対象ツール要件は明確です。
審査者が迷わないよう、サービス名・リスト該当・提供内容を先に置くと、形式面の減点を避けられます。
③ 3年計画の生産性(年平均+1%)を“計算できる形”で示す
年平均1%向上の要件は、計画の実現可能性・合理性まで求めます。
「売上増」だけでなく、リスク低減による損失期待値の減少という考え方も規程に沿います。
支援事業者は、顧客の数字が荒い場合でも、前提(事故頻度・停止日数・復旧費用等)を置いて“説明可能な算式”にしておくと強いです。
④ “運用方法”を支援事業者が具体化する
支援事業者には、導入・利活用・効果確認まで責任を持つ旨が規定されています。
「導入して終わり」ではなく、月次レポート、アラート対応フロー、社内教育の実施方法等、運用絵姿をテンプレ化して提示すると、申請の完成度が上がります。
⑤ 計画変更の可能性を織り込む(変更=悪ではない)
計画変更は、原則として支援事業者の確認を受け、事務局承認を得る必要があります。
むしろ重要なのは、変更が生じた際に適切な手続ができる体制を先に示すこと。審査者は“統制が効くか”を見ています。
⑥ 1年未満で利用停止しない設計にする
交付決定の取消事由として、「導入日から1年未満で利用しなくなった」等が明記されています(一定の例外除く)。
顧客側の解約リスク(資金繰り・担当退職・体制崩れ)を見越し、契約期間・社内責任者・引継ぎ手順まで設計しておくのが、支援事業者の腕の見せ所です。
⑦ 書類の保存・提出要求に耐える運用(監査目線)
申請情報は事務局の求めに応じ閲覧に供せるよう保存義務があります。
さらに立入調査も規定され、関係資料の調査・質問があり得ます。
支援事業者は「何を・どこに・誰が保存するか」を、顧客と合意しておくと、後で揉めません。
⑧ 不備・差戻しを前提に“提出前チェックリスト”を持つ
規程上も、交付決定後に条件不備が是正されない場合など取消のリスクが示されています。
支援事業者がチェックリスト運用(記載整合、添付過不足、見積・契約整合、導入スケジュール整合)を回すだけで、採択以前に“審査に乗る確率”が上がります。
⑨ 反社排除の誓約など「形式要件」を確実に
申請者は反社会的勢力排除の誓約事項に同意する扱いとなります。
形式要件のミスは、内容が良くても台無しになります。ここは機械的に潰しましょう。
⑩ 支援事業者自身のコンプライアンス(虚偽・不正の芽を摘む)
虚偽や不正、責務不履行等があれば登録取消の対象です。
採択率を上げたい局面ほど、過剰な表現や“盛り”が入りやすいので、事実に基づく記載、証憑で裏付け可能な表現、顧客にも説明できる根拠、を徹底してください。結果として、長期的に案件が回る支援事業者になります。
8. まとめ:2026は「ツールの良し悪し」より「一貫した申請設計」が勝ち筋
セキュリティ対策推進枠2026は、対象ツールが「お助け隊リスト」に限定され、補助対象経費もサービス利用料(最大2年分)に整理されています。
一方で、申請者側には3年計画での生産性向上(年平均+1%)等、事業計画としての説明責任が求められます。
この枠で採択可能性を高める本質は、目新しい言い回しではなく、制度目的→課題→サービス選定→運用→実績→効果報告まで、矛盾なく設計し切ることです。IT導入支援事業者が本来担うべき「申請・報告の取りまとめ」という責務を、品質高く遂行できる体制を作ることが、最短で成果につながります。
代表挨拶

行政書士藤原七海事務所の藤原です。
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