※本記事は、デジタル化・AI導入補助金2026「インボイス枠(電子取引類型)」の交付規程に基づき、IT導入支援事業者(ベンダー/導入パートナー)向けに、ITツール登録・提案・申請支援・導入定着の実務ポイントを整理したものです。運用は公募回・事務局案内で更新され得るため、申請時点の最新情報をご確認ください。
1. 電子取引類型の位置づけ:なぜ“支援事業者の出番”が大きいのか
電子取引類型は、インボイス制度対応を推進するために、発注側がクラウド型の受発注ソフトを導入し、受注側(取引先)の中小企業等にアカウントを無償供与する取り組みを支援する枠です。
ここで重要なのは、単なる「自社の会計・請求のデジタル化」ではなく、取引先まで巻き込んだ“取引の基盤化”が前提だという点です。だからこそ、導入に伴う調整・オンボーディング・運用設計・証憑設計まで含めて支援できるIT導入支援事業者が、成果を左右します。
さらに、交付規程上も、支援事業者は単にツールを提供するだけでなく、交付申請・実績報告・事業実施効果報告等の取りまとめを担う位置づけです。
つまり、電子取引類型は「営業→導入→定着→報告」までを一気通貫で設計できる事業者ほど強い、という構造になっています。提案の質がそのまま採択後の工数に跳ね返るため、最初から“運用を回す前提”で組み立てるのが攻略の近道です。
2. 支援事業者登録・ITツール登録の基本:審査されるのは“説明可能性”
電子取引類型では、IT導入支援事業者は事務局への登録申請→審査→登録の流れを経ます。
同様に、ITツールも支援事業者が登録申請し、事務局審査を経て登録されます。
ここで実務上の勘所は、審査で問われるのは「それっぽい機能があるか」だけでなく、第三者が見てもインボイス対応・要件充足が確認できるか(説明可能性)です。登録前に次の“証明パッケージ”を作っておくと、登録・提案・申請支援が安定します。
登録・提案で強い「証明パッケージ」(推奨)
- インボイス対応の帳票サンプル(適格請求書要件に沿う画面/出力例)
- 受発注の一連フローの画面(発注→受注→検収→請求→支払)
- 取引先アカウントの無償発行・招待・停止の画面、運用フロー
- 取引履歴・変更履歴・ログ(監査・トラブル対応の観点)
- 料金体系(クラウド利用費の算定根拠、2年分の試算テンプレ)
- 取引先向けの簡易マニュアル(「最初の5分」でできる操作ガイド)
「導入後に使われるか」「報告時に証憑を出せるか」を見据えて、説明素材をテンプレ化するのが、電子取引類型の“攻略”です。
3. ITツールの要件:3点セット(インボイス対応×受発注×無償供与×クラウド)
電子取引類型のITツール要件は比較的明確です。交付規程では、登録されるITツールとして、インボイス制度に対応した受発注機能を持ち、発注者が受注者に無償でアカウントを発行し利用させる機能があり、さらにクラウド型ソフトウェアであることが定められています。
このため、提案・導入設計では次の落とし穴に注意が必要です。
よくある落とし穴
- 「受発注」と言いながら、実態が“請求書発行だけ”で、取引プロセスの管理が弱い
- 無償アカウントの権限が限定的で、取引先が実務に使えず定着しない
- 料金設計が“アカウント課金”で、無償供与を増やすほど発注側の負担が読めない
- ログ・履歴が薄く、後日の「継続利用の証憑」に耐えない
- インボイス要件を満たす帳票出力ができても、修正・差戻しの運用が設計されていない
要件を満たすだけでなく、「取引先が使う前提で運用に乗るか」を審査・採択後の成功条件として扱うべきです。
4. 補助額・補助率・対象経費:電子取引類型は“按分”が要点
電子取引類型は、補助額と補助率、対象経費が整理されています。
- 補助額:下限なし~350万円
- 補助率:中小企業・小規模事業者等は2/3以内、その他は1/2以内
- 補助対象経費:クラウド利用費(クラウド利用料 最大2年分)
そして最大のポイントが、補助対象経費の“按分”です。
「契約する受注側アカウント総数のうち、取引先である中小企業・小規模事業者等に供与するアカウント数の割合を乗じた額」が補助対象経費となります。
提案時の実務(ここを説明できると強い)
- 取引先の属性(中小企業等/それ以外)を整理し、想定アカウント数を設計
- 「無償供与比率」を前提に、2年分利用料の補助対象額を試算
- 取引先拡大(アカウント増)に伴う費用・補助対象の変動シナリオを提示
- 無償供与の対象範囲(どの取引先に配布するか)を段階導入で提案する
顧客は「補助率」だけ見がちですが、電子取引類型はこの按分が効いてきます。支援事業者が最初に“数字の見える化”をしてあげると、提案の説得力が跳ね上がります。
5. 申請できる企業像:発注側が主役(しかも中小取引先が1社以上)
電子取引類型の交付対象者は、要点を抜くと次の通りです。
- 自らの費用負担でITツールを導入する発注者であること
- 無償アカウントの受注者の中に、中小企業・小規模事業者等が1社以上含まれること
ここから、支援事業者の営業ターゲットは明確になります。
狙い目は「協力会社・仕入先・外注先など取引先が多い発注側企業」です。建設・製造・卸小売・物流・広告制作など、取引先が多い業種ほど、導入効果がストレートに出ます。加えて、取引先のITリテラシーがバラつく業界ほど、支援事業者側のオンボーディング設計(操作説明、FAQ、サポート窓口)が成果に直結します。
6. 申請支援の肝:着手前申請+支援事業者の確認
交付申請は、原則として補助事業に着手する前に、IT導入支援事業者の確認を受けて行うことが定められています。
このルールを崩すと、交付決定前の契約・支払い等が問題化するリスクがあります。支援事業者としては、見積提示の段階で「着手」になり得る行為(申込確定、利用開始、初期費用支払い等)を顧客に明確に伝え、申請→交付決定→契約・導入の順序を設計することが重要です。特にクラウド型は「利用開始=契約成立」と解釈されやすい場合もあるため、導入スケジュールは“慎重すぎるくらい”でちょうど良いと考えてください。
7. 導入後の成功条件:効果報告と“継続利用の証憑”設計
電子取引類型は採択後が本番です。交付規程では、事務局が定める期間において、補助事業者は支援事業者と協力し、インボイス制度への対応状況およびITツールを継続的に活用していることを証する書類等を提出する義務が定められています。
また、補助事業に関する書類は完了年度終了後5年間保存が必要です。
さらに、継続利用に関しては、導入日から1年未満で利用しなくなった場合など、交付決定取消し(返還リスク)の条項もあります。
支援事業者が用意すべき「証憑テンプレ」
- 取引先への無償アカウント供与一覧(企業名・付与日・ID・停止日)
- 利用ログ(発注件数、請求書発行件数、取引履歴のエクスポート)
- インボイス対応帳票の出力例(定期的に保存)
- 導入・教育の実施記録(説明会資料、参加者、FAQ)
- 運用ルール(権限、承認フロー、例外処理の手順書)
- トラブル対応記録(差戻し、修正、問い合わせ対応の履歴)
この“証憑テンプレ”を納品物の一部として組み込むと、顧客は安心し、支援事業者は報告対応の工数を劇的に減らせます。
8. 提案のコツ:採択・定着・継続の3点を同時に満たすストーリー
電子取引類型で強い提案は、次の3層が揃っています。
8-1. 取引課題(現状の痛み)を“発注側”から描く
- メール・紙・PDF混在で、発注~検収~請求の突合に時間がかかる
- 差戻しが多く、締め日に作業が集中する
- 取引先のフォーマットばらつきでインボイス確認が重い
8-2. 解決策(仕組み)を“取引先巻き込み”で描く
- 発注側がプラットフォームを導入し、取引先へ無償アカウント供与
- 受発注・履歴・帳票を統一し、確認工数とミスを削減
- 監査対応・保存の負担を軽減(ログで追える)
8-3. 効果(KPI)を“証憑が残る形”で描く
- 月次締め日数、照合工数、差戻し件数、請求発行時間
- 取引先の利用率(アクティブ率、発注・請求件数)
- 出力帳票・ログの定期保存で継続利用を証明
- “段階導入”で利用率を上げる計画(主要取引先から展開→全体展開)
この構造で提案できると、「導入する理由」「補助金を使う理由」「導入後の安心」が1本の線でつながります。
9. 受給歴がある顧客への注意:追加要件の確認
過去(IT導入補助金2022~2025)に交付決定を受けた事業者について、翌年度以降3年間の事業計画の策定・実行等の要件が規定されています。
さらに、賃金引上げ計画等に関する要件が並ぶため、受給歴の有無は初回ヒアリングで必ず確認し、該当する場合は早期に論点整理しておくのが安全です。
現場では「前に別枠を使った気がする」程度の記憶違いも起こるため、社内の申請担当・経理担当に確認してもらう導線を作ると、後工程がスムーズになります。
10.まとめ:電子取引類型は“オンボーディングと証憑設計”で勝負が決まる
電子取引類型の本質は、発注側が導入し取引先へ無償アカウント供与することで、取引全体のデジタル化とインボイス対応を推進する点にあります。
補助額は最大350万円で、対象はクラウド利用費(最大2年分)ですが、補助対象は取引先(中小企業等)への供与比率で按分されるため、アカウント設計と取引先整理が提案の起点になります。
そして採択後は、対応状況・継続利用の証憑提出が求められるため、支援事業者は導入後の運用設計と証憑テンプレをセットで提供することで、顧客と自社双方のリスクを減らしつつ、高い満足度を実現できます。
最終的に、電子取引類型で評価されるのは「ツールがある」ではなく、「取引先を含めて使い続けられる仕組みが作れているか」です。ここを押さえた提案・登録・導入支援を積み上げることが、次年度以降の紹介・横展開にもつながる最短ルートになります。
代表挨拶

行政書士藤原七海事務所の藤原です。
当事務所では補助金申請のサポートに力をいれております。
補助金申請のお手続きに何かお困りごとがある方はお気軽にご相談ください。
お問い合わせ
フォーム
プライバシーポリシーをご確認のうえ、送信してください。フォームを送信後、ご入力いただいたメールアドレスに自動返信メールが送信されます。自動返信メールが迷惑メールフォルダに入る可能性がございます。ご確認いただけない場合、そちらもご確認いただけますと幸いです。
電話
LINE

