小規模事業者持続化補助金<一般型>(第18回公募)は、小規模事業者等が自社の経営計画に基づき行う販路開拓や業務効率化の取り組みを支援する国の補助金制度です。初めて申請する方にとっては要件や経費のルールが難しく感じられるかもしれません。
本記事では、応募前に必ず確認すべき「応募要件」と「補助対象経費」について、実務目線でわかりやすく解説します。見出しや箇条書きを用いて整理していますので、申請準備の不安解消にお役立てください。
補助金を申請できる事業者とは?
まず、自社が補助金の対象となる「小規模事業者」に該当するか確認しましょう。小規模事業者かどうかは業種ごとの常時使用する従業員数で判断されます。具体的には以下の通りです。
※従業員数を数える際、会社役員や事業主本人、一部のパートタイマーは含まれません。自社の従業員数と業種区分を正確に把握し、基準を超えていないか確認しましょう。また、補助事業実施期間が終わるまで小規模事業者である必要があります(※従業員増加による「卒業枠」での特例申請を除く)。
次に、自社の法人形態や状況が補助対象外に該当しないか確認します。以下に該当する場合は応募できませんので注意してください。
- 対象外となる主な法人等: 協同組合等(企業組合・協業組合を除く)、一般社団法人・公益社団法人、一般財団法人・公益財団法人、医療法人、宗教法人、学校法人、農事組合法人、社会福祉法人、任意団体 など。
- 創業前の事業者: 申請時点で事業を開始していない創業予定者は対象外です。たとえば開業届を提出済みでも、開業日が申請日より後の場合は応募できません。
さらに補助金の趣旨から、大企業の実質的な子会社や極めて収益規模の大きい企業も対象外となっています。具体的には「資本金または出資金5億円以上の企業から100%出資を受けていないこと」や「直近3年の平均課税所得が15億円超でないこと」等の条件があります。通常の小規模事業者であれば該当しないケースがほとんどですが、自社の資本関係や業績も念のため確認しておきましょう。
どこまで使える?認められる経費の種類と注意点
補助金で支援される経費は、「経営計画」に基づいて販路開拓等の取組に直接必要なものに限られます。公募要領では補助対象となる経費区分が定められており、該当するもの以外は補助の対象外です。第18回公募(一般型)で認められる主な経費区分は次の8つです。
- 機械装置等費:
補助事業の遂行に必要な機械・設備の購入費用。例:新商品製造のための機械、サービス提供に必要な特殊機器等。中古品の購入も条件を満たせば可能ですが、購入単価が税抜50万円未満であることなどの制限があります。汎用性が高く事業目的以外でも使用し得る機器(例:パソコンや事務用プリンタ等)は補助対象にならない点に注意しましょう。 - 広報費:
販路開拓につながる広告宣伝活動に要する経費。例:商品・サービスをPRするチラシやパンフレットの作成費、広告媒体への掲載料、看板設置費用など。にあるように補助事業計画に基づく宣伝目的のものが対象で、単なる会社案内や採用広告など販路開拓に直結しない宣伝は対象外です。Webや動画制作による広告は③に計上するなど、費目ごとに計上先が決まっています。 - ウェブサイト関連費:
集客やECサイト構築等のためのWebサイトやシステムの新規開発・改修・更新・運用にかかる経費。
例:ECサイトの構築費用、予約システム導入費、ホームページの多言語化対応、SEO対策のためのサイト修正など。
ウェブ関連の費用は販路開拓や業務効率化につながる目的に限られ、単なる企業紹介ページの作成や運用のみでは認められません(※既存サイトの軽微な更新やドメイン取得費などは対象外になるケースがあります)。
なお、ウェブサイト関連費「のみ」での申請は不可であり、他の補助対象経費と組み合わせて申請する必要があります。また、補助金申請額の4分の1(最大50万円)が当経費の上限と定められています。
ウェブ広告用の動画制作費等も、このウェブサイト関連費に含めて計上します。 - 展示会等出展費:
商談会や展示会への出展に関する経費(オンライン展示会や商談会も含む)。例:展示会の出展ブース料や出展に必要な備品レンタル料、展示用パンフレットやサンプル作成費等。自社の商品・サービスを展示会でPRするために直接必要な費用が対象です。ただし、国や自治体等から別途補助を受けて出展する場合との重複は認められません(他の公的補助金と同じ経費を二重に請求できない)。計上にあたっては、出展内容や見積書の準備なども含め、漏れなく計画しましょう。 - 旅費:
補助事業計画の遂行に必要な出張旅費。展示会や商談会への赴任旅費、販路開拓のための市場調査の旅費などが該当します。旅費の算出は国の定める基準に準拠する必要があり、最も経済的な経路での実費に限られます。例えばグリーン車やビジネスクラスの利用は認められず、日当や宿泊料にも上限があります。旅費を計上する際は、公募要領別紙の「旅費基準」を確認し、適正な範囲で見積もりましょう。 - 新商品開発費:
新商品や新サービスの開発に必要な試作や資料の購入費等。試作品の材料費やデザイン試作費、商品パッケージの試作費用などが該当します。例えば、新メニュー開発のための食材試作費、新製品の試作品製造に必要な原材料費などです。原材料を購入して試作する場合は受払簿などで管理する必要があり、汎用的な消耗品購入は認められません。開発行為そのものではなく「販路開拓と生産性向上」に資する開発であることが重要です。 - 借料:
補助事業に必要な機器・設備等のリース料やレンタル料。例えば、プロジェクト期間中だけ使用する機材をレンタルする費用や、新サービス提供のため店舗とは別に短期でスペースを借りる費用等が該当します。注意点として、通常業務にも使用するような賃借料や既存事務所の家賃は補助対象外です。あくまで補助事業の一環として新たに必要となるレンタルに限られ、期間も補助事業実施期間内に収まる費用のみが対象となります(期間を超える契約は按分計算が必要)。 - 委託・外注費:
補助事業遂行のために一部業務を他社に委託・外注する経費。例:専門家へのコンサルティング費用、チラシデザインやWeb制作の外注費、システム開発の委託費用など。自社では対応が難しい専門的作業を外部に依頼する場合に計上できます。なお、デザイン会社への委託などで補助事業者(申請者)自身が実質何もしないような丸投げ状態になっていると事業趣旨にそぐわないため注意が必要です。発注先が関連会社だと経費計上が認められないケースもありますので、公正な第三者へ発注し適切な契約・証憑を整備しましょう。
以上の経費はいずれも「補助事業期間内」に支出が完了する必要があります。交付決定通知を受ける前に発注・支出した費用は一切補助対象になりません。採択後、交付決定前には見積書の提出等も求められますので、各経費について事前に金額根拠を用意しておくとスムーズです。支出の証拠書類(契約書・領収書・写真等)も全て揃える必要があるため、計画段階から管理体制を意識しましょう。
補助金をこう使った!活用OK事例集
補助対象となる経費の具体像が分かったところで、実際にどんな取り組みに補助金が活用できるかをイメージしましょう。過去の採択事例から、小規模事業者が販路開拓や生産性向上のために補助金を使ったOK事例をいくつか紹介します。
- ECサイトの新規構築・ネット販売への進出:
店舗販売だけだった事業者が補助金を活用して ECサイトを開設し、新たな販路を開拓。サイト制作費や商品登録作業費用などが③ウェブサイト関連費として認められます。これによりオンラインで全国から注文を受け付ける体制を整え、売上拡大につなげた例があります。 - 展示会への出展による新規顧客開拓:
自社の商品・サービスを広めるため、業界の展示会に初めて出展。ブース出展料や展示用パンフレット作成費、サンプル製作費などが補助対象となり、④展示会等出展費や②広報費として計上できます。展示会で得た名刺を元に新規取引が始まるなど、販路拡大に直結した好例です。 - チラシ作成・ポスティングによる地域集客:
地元での集客力アップのため、プロのデザイナーに依頼してチラシを制作し、ターゲット地域にポスティング。デザイン費・印刷費・配布委託費などが②広報費や⑧外注費の対象です。素人作成では得られない高品質なチラシで新規顧客を獲得した事例です。 - 新商品の試作品開発とPR:
今までになかった新商品を開発し販路を広げた例です。試作品の材料費や試作開発費用を補助金で賄い(⑥新商品開発費)、完成した試作品を持って商談会に参加(④展示会等出展費)。さらに製品カタログや紹介動画を制作して広報展開(②広報費・③ウェブサイト関連費)。一連の取組みにより市場の反応を得て、本格展開につなげました。 - 業務効率化ツールの導入と販路拡大:
販売管理を効率化するためPOSレジシステムを導入し(⑦借料によりリース契約)、同時に空いた時間で新サービスを開始して販路を広げた例もあります。システム導入費用や操作研修費用を補助金でカバーし、生産性向上と売上増加を両立しました(※システム導入そのものだけでは対象外で、販路開拓と一体で行う場合に認められます)。
これらはあくまで一例ですが、小規模事業者持続化補助金は「新たな販促・設備投資で売上アップ」につながる取組みで幅広く活用されています。自社の課題に即して、「これまでやっていなかった販路開拓」「業務効率化による生産性向上」といったテーマであれば、補助金を追い風にできます。計画段階で他社の活用事例を参考に、自社ならではの取り組み内容を検討してみましょう。
これはNG!補助対象外となる経費の代表例
一方で、補助金で支出できない経費も多々あります。誤って補助対象外の経費を計画に入れてしまうと、不採択の原因になったり、最悪場合によっては交付決定後に経費を削除され補助金が減額・取消となることもあります。以下にNG事例として代表的な補助対象外経費を挙げますので、計画段階で除外しましょう。
- パソコンや汎用的な事務機器の購入費:
PC、タブレット、プリンター、複合機、電話機などの汎用機器類は補助対象外です。これらは用途が広く事業目的以外にも使いまわせるため認められません。「機械装置等費」であっても、文房具や自転車からPC周辺機器に至るまで、一般的な事務用品の類は補助の対象にならないので注意してください。 - 日常の経費や維持費(家賃・光熱費など):
事務所の家賃や水道光熱費、通信費など通常の事業維持にかかる経費は対象外です。例えば「毎月の店舗家賃を補助金で払いながら販促をする」ことはできません。ただし、新たな販路開拓のために期間限定で店舗やスペースを新規賃借する場合などは例外的に認められるケースもあります。いずれにせよ既存の固定費は補助できないのが原則です。 - 接待交際費・飲食費等:
顧客との会食代、打ち上げパーティー費用、贈答品購入費など飲食や接待に関する費用は一切補助対象になりません。たとえば展示会出張時の懇親会費や来客用のお茶菓子代もNGです。公的資金である以上、贅沢品や娯楽的な支出(奢侈費)は認められないと心得ましょう。 - 土地・不動産の購入や車両の車検修理費等:
不動産の購入費用、建物の改装費、車両の購入・修理・整備費も対象外です。例えば事業拡大のための新店舗建設費用や社用車の購入費用などは認められません(補助金はあくまで販路開拓等のソフト面が中心で、大規模な資産取得は対象外)。また、美術品や骨董品等の購入も認められません。 - 日常消耗品・間接経費類:
文房具、名刺、コピー用紙、インクカートリッジ、梱包資材、作業着・制服、清掃用品といった消耗品の購入費は対象になりません。さらに郵送費や振込手数料などの支払い手数料類も補助対象外です。基本的に「販路開拓に直接必要とは言えない経費」は全て除外されます。
以上の他にも細かな対象外経費が定められています。計画した経費の大半が補助対象外だった場合、その申請はまず採択されません。公募要領の「補助対象外経費一覧」を熟読し、少しでも怪しい経費は事前に専門家や事務局に確認することをお勧めします。
初めての補助金申請も安心|行政書士藤原七海事務所がサポートします
小規模事業者持続化補助金は、採択されれば大きな助けになりますが、その一方で、申請にあたっては複雑な要件確認や経費の整理、計画書の作成が求められます。
行政書士藤原七海事務所では、これまで多数の補助金申請をサポートしてきた経験を活かし、丁寧かつ実践的な支援をご提供しています。
- 応募要件や対象経費のチェック
- 計画書作成のアドバイス
- 採択に向けたポイント整理
- 採択後の実績報告書作成支援 まで対応可能です。
「初めてで不安」「一度不採択になってしまった」「忙しくて準備が進まない」といったお悩みがある方も、まずはお気軽にご相談ください。
代表挨拶

行政書士藤原七海事務所の藤原です。
当事務所では補助金申請のサポートに力をいれております。
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